令和7年度施政運営方針

更新日:2025年02月26日

 

令和7年2月26日に再開した大阪狭山市議会定例会3月定例月議会初日で発表した施政運営方針です。

 

施政運営の基本方針

 

振り返りますと、私が初めて大阪狭山市長に就任した平成27年、その前年に、当時の「日本創成会議」が、いわゆる「消滅可能性都市」リストを発表いたしました。あれから10年の節目となる昨年の4月には、「人口戦略会議」が、社人研(国立社会保障・人口問題研究所)の推計をもとに、新たなリストを発表したことは、記憶に新しいところであります。本市はいずれも、消滅可能性のある自治体に分類されることはありませんでしたが、そもそもこうした分類自体に、本質があるわけではないと私は考えます。捉えるべきは、地域差こそあれ、人口急減と世界に類を見ない高齢化が、国全体として同時進行しているという現実であります。

この間、地域によっては、人口が増加するなど、取組みの成果といえるものが一定数見られる一方、国全体で見れば、人口減少や東京圏への一極集中などの大きな流れを変えるまでには至っておりません。「地方創生」と謳われて久しいですが、依然、地方が厳しい状況に置かれていることに、変化はないままであります。

初代地方創生担当大臣でもあった石破首相は、就任早々に、自らを本部長とする「新しい地方経済・生活環境創生本部」を政府内に立ち上げ、これまでの成果と反省を生かし、今後10年間で少子高齢化に集中的に取り組む「地方創生2.0」の基本構想策定を打ち出しております。

この間、本市では、住民基本台帳に基づく人口が令和元年8月に過去最高を記録し、令和2年の国勢調査人口もV字回復を果たしました。近年では、若干の人口減少が見られるものの、概観的には人口規模を維持しています。さらに申し上げれば、市内各所における今後の住宅開発の動きなども見ますと、本市に魅力を感じ、暮らしの場として選んでいただける環境がますます充実してきているものと感じています。

一方で、今の人口水準を将来にわたり維持していくことは、将来推計人口などに照らし合わせますと、大変厳しいものがあると認識しています。そのため、人口減少を可能な限り抑えることはもちろんでありますが、人口規模が縮小するなかでも、一定の成長・発展を遂げながら、都市機能を維持していく「持続可能なまちづくり」が極めて重要であると捉えています。

折しも、地方創生を成し遂げるための重点取組をまとめた「第2期総合戦略」は、令和7年度末をもって計画期間が満了し、時を同じくして、「第五次総合計画」は、中間年度を迎えます。申し上げるまでもなく、地方創生に向けた取組みは、まちづくり全体を考えるなかで欠かすことができない重要な部分であり根幹といえます。そうしたことから、これら取組みの充実も含め、各計画の一体的かつ効果的な推進が図れるよう、見直しに向けた検討を鋭意進めているところであります。

今後とも、持続可能なまちづくりを基本に、市民の皆様が安全で安心して暮らせるまちの土台を強固なものとしながら、とりわけ若い世代にとっても、安心して働き、出産や子育てができる環境の充実や、生活利便性の向上、さらには、にぎわいと活力に満ちたまちの魅力創造など、市の成長と発展に向けた未来への投資をしっかりと進めてまいります。 

 

 

輝く未来を築いていくためには、子どもへの投資は必要かつ不可欠であります。子育て支援や教育の充実に、引き続き、力を注いでまいります。

本市における教育のさらなる振興に向け、市長や教育委員会、保護者、市民、そして学校園それぞれの役割等を明文化した条例案を今議会に上程いたします。とは申しましても、次代を担う子どもの教育をまちぐるみで取り組む姿勢は、条例制定前後も変わることはありません。ここに改めて、“未来に輝く教育のまち”を標榜し、総がかりの教育を今後も強く推し進めていく姿勢や決意を示したうえで、令和7年度からの新たな計画となります「第3期教育振興基本計画」に基づき、取組みを進めてまいります。

本市が長年培い、貫いてきた教育の理念はしっかり守り、めまぐるしく変化する環境に柔軟かつ適切に対応しながら、次代に活躍できる子どもたちの健やかな成長を、保護者を含む地域の皆さんや教育・保育等の現場の皆さんとも一体となって支えてまいります。

国においては、「こどもまんなか社会」の実現に向けた政策を政府全体で進めています。本市においては、「こども家庭センター」を昨年4月に設置し、「児童福祉」と「母子保健」の両機能が連携した、相談等の一体的な支援体制を構築いたしました。また、来月末には、家庭や子どもの状況に応じ、きめ細やかな支援を推進していくための計画となります「第3期子ども・子育て支援事業計画(さやまっ子のびのびプラン)」を策定する予定であります。新たなプランにも沿いながら、妊娠期から出産、子育て期に至るまで切れ目なく、子ども本人も含めた子育て家庭をしっかりと支援してまいります。

次に、学校教育についてであります。
まず、学校給食に関しては、国における無償化の議論にも注目が集まっているところであります。本市では先んじて、小中学校の給食費無償化を段階的に進めてきたところでありますが、今般、最終目標年次としておりました令和7年度において、食材価格高騰への対策を講じたうえで完全無償化を実現し、教育に要する保護者負担のさらなる軽減を図ってまいります。

昨年は、「こども未来フォーラム」が開催され、子どもならではの提案や意見を頂きました。「自分たちのまちを良くしたい」。子どもたちのこうした純粋な想いが、地域の皆さんとのふれあいや地域を知る学びのなかでより深められ、地域や社会の一員としての自覚や志を育み、今後の自己実現やキャリア形成の原点になることを願ってやみません。

本市では令和2年度から、「コミュニティ・スクール」の導入を順次進め、令和6年度末をもって全小中学校への導入が完了いたします。今後は、小学校間の水平連携や小・中学校間における垂直連携、さらには、地域を含めた面的な連携がより一層広がりを見せられるよう、取組みを発展させます。“地域とともにある学校”。この理念を全市的にしっかりと根付かせてまいります。

今、保育や教育の拠点となる市立学校園は、時代の移り変わりや取り巻く環境の変化に伴い、大きな転換期を迎えています。少子化や保育ニーズの高まりなどにより、市立幼稚園等における教育利用の園児数は減少し、学校においては、規模の小規模化と大規模化が同時進行しています。

学校園が抱える課題の解消に向けた「市立学校園の適正規模・適正配置に関する実施方針」のもと、まずは小規模化が進む南第三小学校を小規模特認校とし、本年4月から、その歩みをスタートさせます。子どものよりよい学びを第一に、少人数でのきめ細かな指導や、ソフト・ハードの両面からICTを活用した教育活動を先導的に展開し、本市ICT教育のパイロット校としての役割を果たしてまいります。

また、本実施方針で示されました、幼稚園・こども園の再編・統合や子育て支援センター“ぽっぽえん”との複合化、さらには、特に老朽化が進む狭山中学校の建替えに関しましては、地域や保護者等の皆様のご意見等も踏まえ、検討を進めてまいります。

次に、より快適で魅力ある都市空間の形成に向け、「コンパクト・プラス・ネットワーク」の考えのもと、市域を俯瞰した都市機能の立地適正化を図りながら、まちのリメイクに取り組んでまいります。

まず、金剛駅周辺エリアでは、「大阪のまちづくりグランドデザイン」において、にぎわいや多様な交流が生まれる空間の創出が示されており、本市「立地適正化計画」においても、市の「中心拠点」として、さらには大阪南部における「広域公共交通の核」として、その空間価値やブランド価値、利便性の向上に向けたまちづくりを推進していくこととしています。また、隣接する富田林市におかれましても、同駅を起点とした地区の活性化に取り組んでおられることから、鉄道事業者も含めた三者がともに協力しながら、広域連携・公民連携による駅周辺のまちづくりを検討してまいります。

今熊地区周辺エリアにおいては、「福祉・文化拠点」としての主要な公共施設が集積しておりますが、総じて老朽化が進んでいる状況であります。ご承知のように、公共施設の老朽化は全国的に課題となっており、国は、施設の集約化や複合化に取り組む自治体を支援するため、財政負担の軽減に資する地方債(公共施設等適正管理推進事業債)の活用を促進しておりますが、その期限は令和8年度とされています。そこで、本地方債が確実に活用できるこの機を捉え、民間企業との連携も視野に入れた多機能複合施設の整備や、エリア一体での屋外空間等の創出をめざすとともに、誰もが訪れやすい拠点となるよう、交通結節点としての機能強化に向けても検討していくことといたします。

現在、市民の皆様にご意見を募っておりますように、エリアのコンセプト案は、「一人ひとりが輝き、未来のさやまをつくる場所~まもる・まなぶ・つなぐ・はぐくむ~」であります。「みんながいこい、自分らしくいられる“まもる”」、「あそびやまなびを通じて、日々、新しい自分を見つけられる“まなぶ”」、「気軽につながることができ 、にぎわいが生まれる“つなぐ”」、「さやまをつくる人・文化・活動の未来への架け橋となる“はぐくむ”」。そういった場所を、市民の皆様とともに創ってまいります。

狭山ニュータウン地区周辺エリアにおいては、近畿大学病院等が本年11月に堺市泉ヶ丘地区へ移転する予定であります。市民の皆様が移転後も変わらず、近畿大学病院に容易にアクセスできるよう、新病院への乗入れも視野に入れた市循環バスルートの充実を図ってまいります。

移転後の跡地に関しましては、昨年12月、開発事業者候補が近畿大学より公表されたところであります。候補事業者からは近畿大学を通じて後継病院の立地を含む跡地全体の土地利用案が示されておりますので、都市計画上の手続きに沿って、必要な協議・調整を進めてまいります。また、跡地における後継病院の開設に向けては、必要となる医療法上、あるいは開発行為に係る許可等が確実に得られるよう、引き続き、当該医療機関とも対話を密にし、働きかけを行ってまいります。

本市は、昭和後期における狭山ニュータウン開発とともに成長と発展を遂げてきたといっても過言ではありません。病院等移転後の跡地開発や、今後の府営狭山住宅の集約建替えなど、狭山ニュータウンに、再び、新風が吹き込もうとしています。かつてもそうであったように、この新たな開発が、再び、市の成長と発展を牽引するほど強く、輝かしいものとなりますよう、今後とも関係各所と緊密に連携し、取組みを進めてまいります。

 


日々の生活や事業活動の安定した営みは、安全で安心なまちの基盤があってこそ成り立ちます。安全・安心なくして、まちの成長や発展はありません。

今年で、阪神・淡路大震災の発生から30年となりました。この間も、東日本大震災をはじめ、熊本地震や能登半島地震など、地震による災害は後を絶ちません。地震災害に加え、気候変動に起因する豪雨災害の激甚化や頻発化も年々進んでおり、その脅威が増しています。昨年、能登半島では、震災の復旧・復興の最中に、豪雨災害に見舞われることとなり、複数の災害が重なり合う「複合災害」への対策も課題となりました。

世界有数の災害大国といわれる日本。災害はいつ起きても不思議ではありません。私たちは、防災をより身近なものとして捉え、過去の経験から学び、その経験を次なる災害への備えや行動につなげていかなければなりません。

昨年、市役所では、有事における円滑な初動を確保するため、災害対策本部の役割を担うすべての職員に、「災害時初動マニュアル」を配布するとともに、さらに、防災士資格を有する職員を中心に、有事を想定した災害対応研修を実施いたしました。今後もこうした研鑽を積み重ね、市職員の災害対応能力のさらなる向上を図りつつ、市域の防災・減災対策を進め、地域の皆さんの主体的な取組みもしっかりと支援しながら、“災害に強いまち”をめざしてまいります。

窃盗等の街頭犯罪をはじめ、子ども・女性を狙った犯罪や、特殊詐欺などに加え、“匿名・流動型犯罪グループ”による凶悪犯罪にも不安が広がっています。市民の皆様が不安なく、より一層安心して暮らせるまちとなるよう、引き続き、地域における防犯環境のさらなる充実強化を図ってまいります。

誰もが健康でいきいきと安心して暮らせるまちづくりに向けては、引き続き、福祉、医療、介護などの各分野において、施策の充実を図ってまいります。たとえ施策を充実しても、支援を必要としている方々が諸制度の狭間で取り残され、支援が届かないようなことがあってはなりません。今後とも、庁内関係部署間の連携はもとより、各関係機関、関係団体とのネットワークも最大限に活用しながら、各施策・分野の枠を越えて重層的に、要支援者に寄り添える体制の確保に努めてまいります。

市民生活や事業活動に影響を及ぼしている物価高騰への対策も、現下の急務であります。昨年の春闘では、実に33年ぶりとなる5%超の高い賃上げ率が実現するものの、政府がめざす、賃金上昇が物価上昇を安定的に上回る経済の実現には、道半ばであります。こうした状況等も踏まえ、特に物価高騰の影響が大きい非課税所得世帯へは、本年1月からいち早く、給付金の支給に取り組んでいるところであります。さらに、市民や事業者の皆様の消費生活や事業活動を広く支援するため、さやりんポイント事業や中小企業等支援などにも取り組むこととしております。

引き続き、厳しい状況に直面する市民や事業者の皆様に寄り添い、物価高騰対策を順次講じてまいります。

 


持続的で安定した施策や事業の展開は、確かな行財政運営の基盤のもとでしか成し得ません。

国政に目を向けますと、昨秋の総選挙の結果、衆議院は与党が過半数を割り、法案や予算案は野党の賛成なくして成立しないという、不安定な政局が続くと見られます。いわゆる「年収103万円の壁」の引上げや教育の無償化など、地方財政にも少なからず影響が及ぶ国策が議論されるなかで、国・地方を通じて伸び続ける社会保障関係経費や老朽化したインフラの維持・更新費用、賃金・物価上昇等による負担増なども考慮いたしますと、地方財政は、依然、不確実性が高く、厳しさはより一層、増していくものと認識しています。

そうした状況であっても、我々基礎自治体は、常に市民に身近な行政として、そのサービスを安定的に提供し、かつ、成長・発展に向けた投資を計画的に進めていかなければなりません。

本市ではこれまで、「行財政改革大綱」の理念のもと、計画的に行財政改革に取り組み、一定の成果を得てきたところでありますが、少子高齢化や働き方改革、デジタル化の進展など、この間の社会情勢の変化やライフスタイルの多様化は、今日の行政サービスのあり方をも大きく変化させています。そこで、こうした時代の潮流を捉え、これからの行財政運営の指針となる「行財政運営戦略大綱」を取りまとめたうえで、今後5年間における個別の取組みを示す「行財政運営戦略プラン2025」を策定することといたします。新大綱の考えのもと、新たなプランに沿って、限りある経営資源を有効活用し、その効果を最大限に引き出す取組みを不断に実行しながら、まちの成長と発展を見据えた持続可能なまちづくりを戦略的に推進していくことといたします。

 

さらに、“人材”も限りある経営資源の一つであります。

人は、よりよい組織のなかで成長し、また、組織は、一人ひとりのたゆみない成長により支えられています。ゆえに、一人ひとりの成長を組織としてもしっかりと支え、“個”の成長が“組織”の成長をさらに押し上げていく好循環を、今後も不断に創り出していくことが肝要であります。今回、本市組織の継続的な成長と地域社会の持続的な発展に寄与することを目的に、職員の人材育成や組織運営に関する条例案を議会に上程いたします。

本条例制定を新たな起点に、職員ひいては市役所組織がより一層成長を遂げながら、地域とともに発展していけるよう、総合的かつ戦略的に、人づくり、組織づくりを進めてまいります。

 

 

それでは、令和7年度に実施いたします主な施策につきまして、第五次大阪狭山市総合計画の施策体系に沿った形で、その概要をご説明申し上げます。

 

 

まず、「子どもや若者の未来が輝くまちづくり」に関する施策について、でございます。

子どもの発達段階や特性などを丁寧に把握し理解したうえで必要な支援を行い、すべての子どもたちが共に成長し合うことのできる、インクルーシブな保育環境づくりを支援するため、市内民間保育園等における体制確保のための運営費補助金を拡充いたします。また、現下の物価高騰を踏まえ、給食材料費等の価格高騰に対する支援を行うことで、民間保育園等の運営に係る負担の軽減を図ります。

東野幼稚園においては、令和7年度の新入園児の申込みがなかったことを踏まえ、在園児が引き続き、異年齢交流の機会を得られるよう、他園の低年齢児との交流の場を拡充いたします。

「市立学校園の適正規模・適正配置に関する実施方針」に基づく、幼稚園・こども園の再編・統合等につきましては、園児の保護者や地域の方々に対し、本年1月に説明会を開催したところであります。その場で頂いたご意見等も参考にしながら、新たなこども園と地域子育て支援拠点としての機能を備えた複合施設の整備に向け、取り組んでまいります。

小中学校の学校給食費につきましては、この間、各学期単位で順次、無償化の範囲を拡大してまいりました。令和7年度からは年間を通し、食材価格高騰への対策を講じたうえで完全無償化を実現いたします。

教育環境や内容の充実に向けては、小中一貫教育を軸に、「グローカル」な子どもを育むため、とりわけ英語力の向上と地域学習の充実に注力して取り組んでまいります。

英語力の向上では、生徒一人ひとりの習熟度を丁寧に見とり、学習の定着や教員による指導の効果をより一層高めることを目的に、中学校において、スコア型英語能力判定テストを引き続き実施することといたします。

地域学習では、その充実に欠かせない“地域とともにある学校”を小中学校全校で具現化するため、令和7年度から中学校区単位で「学校運営協議会」を設置いたします。そのうえで、地域未来の学習や学校支援活動に関する調整などを担う、地域学校協働活動推進員を各中学校区に常時配置いたします。

学習内容がより複雑化・高度化し、思考力や表現力を養う学習が増えてくる小学4年生を対象に、学習状況を素早く把握し、その結果を効果的な指導に活かすことができる、CBT調査(Computer Based Testing=コンピューターを活用した学力調査)を新たに導入いたします。

子どもの自立をめざし、一人ひとりの教育的ニーズに応じた指導や支援が行えるよう、各小中学校の状況等を踏まえ、通級指導教室を充実いたします。

南第三小学校を本市におけるICT教育のパイロット校として位置づけ、AIを用いたデジタルドリルを導入するなど、新たなICT技術を取り入れながら、一人ひとりの習熟度に応じた個別最適な学びの環境づくりを進めてまいります。

全児童・生徒1人1台のタブレット端末につきましては、導入から5年目を迎え、経年劣化による不具合事象が頻発している状況に鑑み、各ソフトのライセンスやOS(Operating System)のサポート期間が終了するタイミングを見計らい、大阪府教育庁が主導する共同調達により、一斉更新いたします。

小学校の水泳授業においては、施設の老朽化に伴う維持・管理コストや教員の負担が課題となっていることを踏まえ、インストラクターによる専門的指導により、泳力向上が期待できる民間スイミングスクールを活用した水泳授業を、西小学校において試行実施することといたします。そのうえで、現在の1校1プール体制や今後の水泳授業のあり方などについて、検証してまいります。

中学校の部活動の地域展開につきましては、この間、民間事業者への一部委託による実証事業を進めてまいりました。令和7年度はさらに地域団体をその対象に加えることとし、今後の完全移行を見据えた“大阪狭山モデル”の構築に取り組んでまいります。

学校施設に関しましては、今後、普通教室の不足が見込まれる第七小学校において、教室の増設工事を実施するほか、狭山中学校においては、狭隘な運動場や校舎の老朽化、生徒数増加に伴う将来的な教室不足の懸念等も見据えたうえで、建替えを視野に入れた基本計画の策定をめざします。

大阪・関西万博への学校行事における参加につきましては、現時点で、市内すべての小中学校が、大阪府教育庁の子ども無料招待事業に参加する意向を示しています。そこで、児童・生徒がより安全で円滑に会場へ訪れることができるよう、貸切バスを手配するとともに、その費用は、保護者の皆様にご負担いただくことなく、市で全額負担することといたします。

加えて、学校に在籍する子どもたちには、さらにもう1回分を、未就学児を含め学校に在籍しない子どもたちには、大阪府事業分とあわせて2回分の万博無料チケットを希望に応じ配布いたします。未来社会の担い手となる子どもたちが、その革新技術やサービス等に、直に触れる機会をより多く持てるよう、市としても後押ししてまいります。

 

 

次に、「健康でいきいきと暮らせるまちづくり」に関する施策について、でございます。

重度の障がいをお持ちの方の就労機会をより一層確保するため、従来の福祉サービスでは認められていない、通勤や職場等における支援を、雇用施策と連携した福祉施策として拡充いたします。

高齢者や聴覚に障がいをお持ちの方など、話し声等が聞こえにくいと感じておられる方々とも円滑にコミュニケーションをとることができるよう、軟骨伝導イヤホンを一部の窓口で試行的に活用し、その効果を検証したうえで、他の窓口への展開を検討してまいります。

介護保険制度の円滑かつ適正な運用を含めた高齢者福祉施策を計画的に推進していくため、令和9年度から3か年を計画期間とする、次期「高齢者保健福祉計画及び介護保険事業計画」の策定に着手いたします。

高齢化が進む中、ヘルパー人材の不足が課題となっていることを踏まえ、介護予防・生活支援サービス事業によるサービス提供を補完するものとして、比較的軽易な訪問介護(生活援助)サービスをシルバー人材センターの会員が提供することで、課題の緩和を図ってまいります。

高齢者がゲーム機器などによるeスポーツを通じて、介護予防、認知症対策などの健康維持に取り組みながら、参加者相互の交流を図っていただけるよう、高齢者向けのeスポーツ教室を開催いたします。

要介護状態の原因となる疾患として、心臓疾患に次ぎ、骨折等の疾患が大きな割合を占めていることに着目し、特に、骨密度が急激に低下し始める50歳代の女性を対象に、骨粗しょう症検診の受診勧奨を行います。

また、がんの早期発見・早期治療が将来の健康寿命の延伸に寄与することを踏まえ、検診受診の対象年齢に到達した市民を対象とした、各種がん検診の受診勧奨を実施いたします。

たとえ、がんに罹患したとしても、質の高い療養生活を送っていただけるよう、本市では医療用ウィッグの購入費用の一部を助成しておりますが、お子さんに対しては、成人に至るまでの頭囲の成長等にも配慮し、複数回の助成が行えるよう制度の拡充を図ります。

帯状疱疹の発症や、その後の神経痛などの合併症を予防するため、特に発症リスクが高まる高齢者を対象に、帯状疱疹ワクチンの定期接種を実施いたします。

40歳以上を対象とする国民健康保険加入者の特定健診につきましては、受診率のさらなる向上を図るため、引き続き、過去3年分の健診結果に基づくアドバイス冊子とともに、「さやりんポイント」を進呈する取組みを実施いたします。

令和6年度に実施いたしました福祉施策の再構築に際し、上下水道料金の福祉減免制度見直しとあわせ、激変緩和措置を実施いたしましたが、その影響を段階的に緩和することを目的に、令和7年度においても措置を講じることといたします。 

 

 

次に、「自然と調和した活力のある快適なまちづくり」に関する施策について、でございます。

近畿大学病院等移転後の跡地を含む周辺地域においては、都市計画道路の整備と周辺のまちづくりを一体的に実施することで、魅力ある街並みの形成や利便性、価値の向上につながるよう、土地区画整理事業の導入を想定した現況測量など、必要な調査を進めてまいります。

土砂災害による被害の軽減を目的として、現在、市内の土砂災害特別警戒区域内にある既存住宅の補強費用をはじめ、区域外へ移転するための住宅の除却や、移転先住宅の建設に要する費用の一部を補助の対象としていますが、さらに、移転先住宅への引越し費用を補助の対象に加えるとともに、除却に係る補助増額もあわせて実施することで、区域外移転を一層支援いたします。

人にやさしい交通環境の実現に向けては、老朽化した道路の舗装や橋梁の長寿命化を進めてまいります。また、交通渋滞の解消や歩行者の安全確保の取組みでは、特に課題箇所と捉えております、府道泉大津美原線の東野交差点の改良をはじめ、府道河内長野美原線の南海高野線ガード下、以北の歩道確保に向け、必要な測量や地権者との協議等を市が先行して実施するなど、大阪府と連携し、課題の早期解消に取り組んでまいります。

市循環バスの運行に関しましては、近畿大学病院の移転先となる新たな病院への乗入れを視野に入れた急行便新ルートの増設をはじめ、昨年実施した市民アンケートの結果も踏まえ、乗継時間の調整や既存ルートの改正など、市民の暮らしを支える利便性の高い公共交通をめざします。

公園施設につきましては、誰もが安全で安心してご利用いただけるよう、地域や利用者のニーズ、安全性を踏まえ、遊具を計画的に更新してまいります。

下水道施設におきましては、耐用年数を経過した管渠などが増加し続けており、その老朽化が課題となっています。この間、本市では管渠の維持・更新を包括的民間委託により実施してきたところでありますが、国の新たな制度「ウォーターPPP」による官民連携方式を先導的に活用することで、事業をより効果的に推進してまいります。

低炭素社会の実現に向けては、令和6年度末に策定予定の「地球温暖化対策実行計画(区域施策編・事務事業編)」に基づき、燃料電池コージェネレーションシステムや蓄電池システム、電気自動車への充電設備等を設置した市民に対し、「さやりんポイント」を付与することで、家庭部門における再生可能エネルギー資源の利活用と住宅の省エネルギー化を促進してまいります。

地域産業の振興に向けては、まちの魅力発信につながる新たな特産品の創出も視野に入れながら、市内で栽培された農作物の活用を含め、事業者による新たな商品の開発を支援する制度を創設いたします。

また、大阪・関西万博では、自治体参加催事“大阪ウィーク”に出展することとしておりますので、この機会に、特産品である「大野ぶどう」のPRや販売促進、プロモーションなどを通じて、地域産業のさらなる活性化を図ってまいります。

物価高騰対策では、国の重点支援地方交付金を活用し、市民や事業者の皆様の負担軽減を図ってまいります。
まず、市民の皆様の消費生活を広く支援するため、「さやりんポイント」のチャージ額に対しプレミアムポイントを付与する取組みを、令和7年度においても実施いたします。

次に、市内中小企業等の皆様に対しましては、エネルギー価格の高騰による経営への影響の緩和を図るため、光熱費や動力燃料費に対する支援金を支給いたします。

さらに、市循環バスの運行では、1か月の無料乗車期間を設けることにより、利用者の運賃負担の軽減を図るとともに、外出機会の創出による地域経済の活性化やにぎわいづくりとあわせ、バス利用の裾野拡大にもつなげてまいります。

 

 

次に、「豊かな心と文化を育むまちづくり」に関する施策について、でございます。

すべての人の人権が尊重され、互いの存在や尊厳を認め合う社会に向け、性的マイノリティ当事者が、互いを人生のパートナーまたは家族として生活を共に協力し合い、自分らしく生きることができるよう応援する制度として、「パートナーシップ・ファミリーシップ宣誓制度」を新たに導入いたします。

歴史文化遺産の保存と活用に向けては、史跡狭山池の歴史を知るうえで不可欠な「池守田中家」所蔵の史料群などの調査を進めるとともに、その魅力の発信に引き続き取り組んでまいります。

大阪・関西万博の“大阪ウィーク”では、「市民パフォーマンスステージ」や「市民アート展示」、「歴史遺産展示」を実施し、まちのPRとあわせて、市民のシビックプライドの醸成や郷土に対する愛着、ふるさと意識を育み、歴史や文化、芸術活動のさらなる振興につなげてまいります。

文化・スポーツの振興拠点となる文化会館や各スポーツ施設におきましては、市民の皆様に、より安全で快適にご利用いただけるよう、施設・設備の改修等を順次進めてまいります。

 

 

次に、「安全で安心できるまちづくり」に関する施策について、でございます。

“災害に強いまち”をめざすためには、自助・共助・公助それぞれの災害対応力を高め、連携することが極めて重要となります。まずは、市民一人ひとりの災害に対する意識・知識の向上に努めるとともに、地域防災力の要となる自主防災組織に対しては、引き続き、資機材の貸与をはじめ、訓練活動やリーダーの育成に対する支援を行い、減災対策を推進してまいります。

地域における消防力、防災力の向上に大きな役割を果たす消防団に対しては、活動の安全性や機動性を確保するための装備品等の拡充を進めつつ、常備消防との連携のもと、団員の技能・技術のさらなる向上が図られるよう、消防団活動を支援してまいります。

また、市職員の災害対応能力をより一層高めるため、本市の地域特性、職員の配備体制、過去の訓練実績などを検証したうえで、必要となる実践性の高い訓練を計画的に実施してまいります。

近年激化する豪雨等による浸水への対策では、過去に浸水被害を受けた箇所を優先し、水路改修を進めるとともに、狭山ニュータウン地区内における雨水幹線水路についても計画的に改築を進め、流下能力のさらなる向上を図ります。

市域における防犯環境のさらなる充実強化に向けては、街頭犯罪や特殊詐欺など、あらゆる犯罪の防止効果をより一層高めるため、各小学校区の通学路等を中心に、防犯カメラの設置を強化してまいります。

さらに、防犯カメラを設置する自治会等に対しましても、令和7年度、令和8年度の2か年を“充実強化期間”と定め、新規の設置に対して補助率の嵩上げを行うことで、地区内の防犯カメラ設置をさらに加速してまいります。

 

 

最後に、「施策の推進に向けて」、でございます。

市民参画・協働の推進では、各中学校区におけるまちづくり円卓会議の主体的な取組みや、自治会等が実施する地域活動への支援に引き続き取り組んでまいります。

市民協働によるまちづくりを進めていくうえで、地域活動や市民活動がわかる職員づくりは欠かせません。それぞれの活動の意義や取組手法などを理解することはもちろん、活動されている皆さんのまちづくりに対する想いに触れ、職員自らもまちづくりを自分事として捉える機会にもつながるよう、引き続き、若手職員を中心に職員研修を実施します。

狭山ニュータウン地区の活性化に向けては、地域の住民や地域活動団体の皆様による、主体的かつ自律的なにぎわい形成等に引き続き取り組んでいただけるよう、「狭山ニュータウンの未来を育むプロジェクト」を支援してまいります。

市民が主体となった国際交流・国内交流を進めるため、市民団体が取り組む、姉妹都市、友好都市との自主的な交流活動を支援いたします。とりわけ昨年は、本市とアメリカ合衆国オンタリオ市との姉妹都市提携から50年となる節目にあわせ、同市から訪問団をお迎えいたしましたが、今年は本市からオンタリオ市を訪問し、相互交流を図ってまいります。

情報化の推進に向けては、住民票の写しや戸籍謄本、各種税関係証明書等を交付申請する手段として、新たに、マイナンバーカードを用いたオンライン申請サービスを追加し、市民サービスのさらなる向上を図ります。

全国的に進められております、自治体情報システムの標準化につきましては、令和7年度内の完了に向け、取り組んでまいります。
また、生成AIやRPAといった先進技術を業務に積極的に取り入れるなど、事務の効率化を図ってまいります。
あわせて、セキュリティマネジメントの一環として、インシデント発生時の対応を一層強化するため、研修・訓練等を実施いたします。

議会におかれましては、“開かれた議会”をめざし、議会審議のユーチューブによる生中継等を実施しておられますが、本会議場の音響・映像配信設備が著しく老朽化していることから、これらを更新し、市民の皆様にご覧いただく環境を改善いたします。

公共施設マネジメントの推進では、今熊地区周辺エリアにおいて複合施設等を整備するため、まずは、民間の持つノウハウや技術力、豊富なアイデア等を最大限に活用することを主眼に、設計から工事、施工監理までを一体的に担う事業者を公募により選定したうえで、取組みを進めてまいります。

職員一人ひとりが高い意欲とやりがいを持ちながら成長し、“個”の成長が組織力を一層高めていけるよう、エンゲージメント(組織への愛着や仕事への情熱度合い)に関する調査を継続的に行いながら、その結果分析等をもとに組織課題を明確化し、具体的なアクションプランを実行してまいります。

冒頭申し上げたとおり、「第五次総合計画」及び「第2期総合戦略」につきましては、それぞれ中間年度と計画期間満了の時期を迎えますことから、附属機関であります審議会でのご審議や、市議会でのご議論を経て、一体的に見直しを図ってまいります。 

 

 

以上、令和7年度に取り組みます、主な施策の概要につきまして、ご説明申し上げました。

いよいよ、大阪・関西万博の開幕まで1か月余りを残すばかりとなりました。開催期間中の来場者数は、国内外で実に約2,820万人と見込まれており、これは地元大阪にとっても、地域経済の活性化やにぎわいの創出につながる大きなインパクトになるものであります。

先に触れましたとおり、万博会場では、特産品の「大野ぶどう」や、これを原料として開発した新たな商品等のPRをはじめ、市の歴史を今に伝える遺産の展示を行うなど、庁内関係部署が連携し、まちの魅力を発信いたします。

また、府内のだんじりなどが一堂に集まる春のイベントへは、本市から前田地区会の皆さんが出展・参加されるほか、夏の「交流盆踊り」では、「さやま音頭保存会」の皆さんが中心となって、さやま音頭を披露される予定であります。

さらに、市の独自イベントでは、市民の皆様の日頃の文化・芸術活動の成果を発表いただく場として、市民パフォーマンスステージ“Osakasayama Ryujin Stage ~ MIRAI ~”や、市民アート展示“狭山池バトンアートパーク”を実施するとともに、富田林市、河内長野市、大阪狭山市、太子町、河南町、千早赤阪村の6市町村が連携し、“南河内 LIVE ART EXPO”と題して、地域の魅力発信と活性化につなげるイベントを計画中であります。

このように、市が誇る地域資源やポテンシャル、市民主体による、豊かな個性と魅力に満ちた表現や活動等を、公・民挙げて広く世界に発信し、プロモーションを多角的かつ広範に展開してまいります。

今回の大阪・関西万博のテーマは、「いのち輝く未来社会のデザイン」であります。『一人ひとりが少しの努力をすることから始め、その重なり合い、響きあいが、人を笑顔にし、ともに「いのち輝く未来社会をデザインすること」につながっていく』。こうした万博の理念は、本市総合計画の「水・ひと・まちが輝き みんなの笑顔を未来へつなぐまち」という将来像を掲げた想いとも重なり合うものと認識しています。

すべての人の笑顔があふれ、その笑顔が紡いでゆく大阪狭山の未来。そうした輝かしいまちの未来に想いを馳せ、「訪れてみたい」、「住んでみたい」、誰もが夢や希望を持ちながら、大阪狭山市に「住み続けたい」と思っていただけるようなまちの実現に、今後とも不撓不屈の精神で挑む覚悟であります。

市民の皆様並びに市議会議員の皆様の、さらなるご支援とご協力を賜りますようお願いを申し上げ、令和7年度の施政運営方針とさせていただきます。

 

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