大阪狭山市人権行政基本方針

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基本方針策定の趣旨

大阪狭山市では、これまで、人権教育・啓発、人権擁護に関する取り組みを積極的に実践してきており、市民の人権問題に対する認識・理解は着実に高まってきているものの、なお解決すべき多くの諸課題があります。全国的にみても、同和問題や女性・障害者・高齢者・子どもの問題などの従来の人権問題に加え、児童虐待やDV(注)、いじめ、自殺者の急増、ホームレス問題など新たに対処すべき人権問題が発生しています。
このような状況のなか、市では、平成13年(2001年)3月に「第三次大阪狭山市総合計画」を策定し、基本理念に「まちづくりの中心に『人』を位置づけ、一人ひとりが豊かな人間性をつちかい、お互いの人権を尊重しあいながら安心していきいきと生活できる、すべての人にやさしいまちづくり」を掲げ、『人』を大切にする視点と、市民と行政のパートナーシップによるまちづくりを積極的に進めてきました。
また、平成13年(2001年)6月には「大阪狭山市人権文化をはぐくむまちづくり条例」を制定し、市民と行政の協働により地域社会の隅々にまで人権文化の根づいたまちづくりをめざしています。
「人権文化をはぐくむまちづくり」とは、一人ひとりが、かけがえのない存在として尊重され、人と人とが豊かにつながりあい、だれもが自分らしく生きがいをもって暮らせる多文化共生のまちを築いていくことです。
「まちづくり」の基本は、人づくりであり、人と人とが豊かにつながりあうことです。それには、まず、豊かな人間性や人権感覚をはぐくむ市民の自主的・自発的な生涯学習を進めていくことが大切です。そして、学習によって得られた知識や能力を自己実現や生きがいづくりに活かすとともに、社会的課題の解決や地域社会の発展に役立てていくことが重要です。これは、市が進める市民と行政の協働によるまちづくりの根幹をなすものであり、今、その「しくみづくり」が求められています。
こうしたことから、市では、市民、学識経験者、関係団体代表者等で構成する大阪狭山市人権文化をはぐくむまちづくり審議会に「大阪狭山市における人権行政の諸施策のあり方について」を諮問し、同審議会では平成15年10月から10ヶ月間にわたる審議が重ねられ、平成16年8月に市に答申がなされました。
本基本方針は、この答申を踏まえ、人権諸課題の解決と「人権文化をはぐくむまちづくり」の実現に向け、人権尊重を基本とした市民の生涯学習を推進していくこと、課題を抱える人を地域で支えること、そしてまちづくりにおいて市民と行政が協働していくことの重要性を示すとともに、全ての市の施策を人権尊重の視点で実施するための体系的な行政、つまり総合行政として人権行政を位置づけ、その基本理念及び諸施策の方向性を明らかにするものです。

注 DV:(domestic violence)夫婦や恋人などの親密な間柄にある男女間における暴力。男性から女性に対する暴力がほとんどで、身体的な暴力だけではなく、脅し、罵り、無視、言動の制限・強制、生活費を与えないなど、精神的、性的、経済的な暴力も含まれる。

1.人権をめぐる状況と課題

(1)内外の状況

国際連合においては昭和23年(1948年)の世界人権宣言や国際人権規約をはじめ多くの人権に関する条約が採択され、国家の枠組みを超えた国際的な人権保障の確立への取り組みが進められてきました。そして平成6年(1994年)には、1995年から2004年までの10年間を「人権教育のための国連10年」とすることを決議、採択しています。
国においては日本国憲法における基本的人権尊重の理念のもと、人権に関する各種の法律や制度の整備を進め、また、国際人権規約をはじめ、人権関連条約を次々と批准してきました。
平成9年(1997年)には「人権擁護施策推進法」が施行され、同法に基づいて人権擁護推進審議会が設置され、平成11年(1999年)に「人権尊重の理念に関する国民相互の理解を深めるための教育及び啓発に関する施策の総合的な推進に関する基本的事項について」の答申が出されました。平成12年(2000年)には、国や地方公共団体等の人権教育及び人権啓発に関する責務などを定めた「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」が制定されています。
さらに、人権擁護推進審議会から平成13年(2001年)に「人権救済制度の在り方」、「人権擁護委員制度の改革」についての答申が出され、この答申を踏まえ、人権救済機関の整備等その具体化に向けた検討が進められています。平成14年(2002年)には「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」に基づく「人権教育・啓発に関する基本計画」が策定されるなど、社会生活のあらゆる場で人権尊重と確立を図るための制度、法整備が進められているところです。
大阪府においては、平成9年(1997年)に「人権教育のための国連10年大阪府行動計画」を策定。そして平成10年(1998年)には「大阪府人権尊重の社会づくり条例」を制定し、条例に基づき平成13年(2001年)に策定した「大阪府人権施策推進基本方針」により人権尊重の基本理念を基礎に据えた行政施策を展開しています。
一方、民間においては、人権、福祉、環境など様々な分野でのNPO、NGO(注1)の活動は、国内外、地域社会においてますます活発に展開されており、その社会貢献により、社会的役割はますます重要となっています。また、企業では、「企業の社会的責任:CSR」(注2)が大きく注目され、社会や地域への貢献、人権、労働、環境問題への対応、法令遵守など、社会と共生する企業を評価する動きが国際的に広がっています。

注1 NGO:(Non Governmental Organization)非政府組織。国家間の協定によらずに民間で設立される非営利の団体で、平和、人権の擁護、環境保護、緊急援助などの分野で活躍するもの。
注2 CSR:(Corporate Social Responsibility)企業が社会に対して負う責任。特に、企業活動において利潤の追求だけでなく、法律の遵守や社会的倫理の尊重などを常に有して、安全かつ良質な財・サービスの提供を行うという企業の責務。

(2)主要な人権課題

同和問題、女性、障害者、高齢者、子ども、外国人、その他さまざまな人権課題の概要(現状及び課題)は、次のとおりです。なお、内容には大阪狭山市を含む大阪府全体にかかるものを含んでいます。

1.同和問題

同和問題は、日本の封建社会の身分制度が廃止されたにもかかわらず、現在なお、同和地区出身であることやそこに住んでいることなどを理由にさまざまな不利益や差別を受け、憲法に保障された基本的人権が侵害されているわが国固有の人権問題です。
国をあげての問題解決への取り組みにより、同和地区においては生活環境の改善など、物的基盤整備では大きな成果が見られましたが、なお、依然として進学率の格差、高校中退問題、失業率の高さ、不安定就労などの生活実態における諸課題が残されており、また、結婚や就職、土地建物の取り引きを中心として差別意識が根強く残っています。さらに、近年においても調査業者が府条例に違反する部落差別につながる調査を行い、多数の企業が関与していた重大な事件が発生するなど、同和問題が解決されたとはいえない状況にあります。
今後は、一人ひとりがかけがえのない存在として尊重される差別のない社会の実現をめざし、同和地区、同和地区出身者のみに対象を限定せず、さまざまな課題を有する人々の自助・自立を図り、誰もがそれぞれの個性や能力を活かして自己実現の達成を図るとの視点に立って、的確に行政ニーズを把握し、人権尊重の観点に立った施策として取り組んでいく必要があります。
部落差別を解消し、すべての人の人権が尊重される豊かな社会の実現をめざすために、今後の同和問題解決のための市の施策における課題は次のとおりです。
1.差別意識の解消・人権意識の高揚を図るための人権教育・啓発の充実に努める必要があります。
2.同和地区出身者を含めたさまざまな課題を有する人の自立と自己実現のための人権相談をはじめとした諸条件の整備への取り組みを進める必要があります。

2.女性の人権

法律や制度の整備が進められ、女性のさまざまな分野への社会参加が進む今日でさえ、人びとの意識や行動、社会制度や慣行、伝統的なものの中には、固定的な性別役割分担意識や女性に対する差別、固定的な役割分担を前提にしたものが依然として根強く残っており、真の男女平等の実現を阻む原因となっています。就業する女性が約5割と、女性の社会進出が進んでいますが、「男性は仕事、女性は仕事も家庭も」といった新たな役割分担も見られ、性別による役割の分離は、女性の自立や社会参画を阻むのみならず、男性にとっても一人の生活者として自立することを妨げることとなっています。
また、家族形態が多様化し、家族に関する考え方は変化してきていますが、ひとり親家庭や単身女性への偏見もあり、就職や民間住宅への入居において差別を受けがちです。さらに、夫・パートナーからの暴力、性犯罪、売買春、ストーカー行為など、女性に対する身体的・精神的・性的な暴力の問題が大きな社会問題になるなど、これらへの対応が求められています。
女性も男性も互いにその人権を尊重しつつ、責任を分かちあい、性別にかかわりなく、その個性と能力を発揮することができる社会づくりのため、意識改革をはじめ、あらゆる意思決定の場への女性の参画、福祉・保健・雇用等の諸施策などによる男女共同参画促進のための条件整備を進める必要があります。

3.障害者の人権

障害者を取り巻く状況は、障害及び障害者に対する理解と認識の不足から、就労に際しての差別や入居拒否などの問題をはじめ、物理的な面、制度的な面、文化・情報面及び意識面のバリア(障壁)などにより不利益をこうむり、その自立と社会参加が阻まれることが多く見受けられます。また、医療機関における不当な処遇など人権侵害にかかる事例の発生もあります。
障害者が個人として尊重され、自ら望む生活を主体的に選択し、決定し、行動していくことを阻むさまざまなバリアをなくしていくことが大切です。障害者をはじめとするすべての人が社会からのサービスを平等に享受でき、主体的な意思と能力に基づいて社会に参加できる機会が平等に確保されるよう、人権尊重を基本にすえたまちづくりを進める必要があります。
また、ノーマライゼーションの社会の実現をめざして、障害を有する児童・生徒がともに学び、ともに育つ教育を進め、そのことを通じて、医療的ケアを必要とする子どもをはじめ、障害を有する子どもや難病の子どもの教育を受ける権利を保障する取り組みが求められています。
さらに、社会福祉施設やグループホーム、病院などの設置が地域社会の反対で頓挫したり、設置と引き換えに大きな譲歩を余儀なくされるという、施設と地域との摩擦(いわゆる「施設コンフリクト」)が起きています。その背景の一つに、障害者への偏見・無理解が考えられます。障害や障害者に対する知識の普及や理解を深めることはもとより、施設等の整備が地域に不可欠な資源として組み込まれ、地域住民と交流することに積極的な意味を持たせることなどを基本に、施設コンフリクトの解消に努める必要があります。
 

参考

  • 障害者基本法 「障害者は、その有する能力を活用することにより 社会に参加するよう努めるものとする。」
  • 府障害者計画 「誰もが意欲と能力に応じていきいきと働くことのできる地域社会をめざします。」
  • 大阪狭山市障害者計画 「障害者が主体的に自己の意思と能力に基づいて社会に参加できるようになることをめざします。」
  • ユニバーサルデザイン 障害者や高齢者、外国人、男女などそれぞれの違いを超えてすべての人が暮らしやすいようにまちづくり、ものづくり、環境づくりを行っていこうとする考え方。
  • 教育基本法 「国民は、ひとしく、その能力に応ずる教育を受ける機会を与えられる。」

4.高齢者の人権

核家族化の進展等により、一人暮らし世帯や夫婦のみの世帯が増加しています。また、インターネットなど情報通信技術の発達は、生活の利便性の向上につながる反面、高齢者にとっては取り扱いにくい側面もあり、社会参加を阻害するおそれがあります。一方、高齢者の介護は、長期化、重度化する中で、介護者の高齢化など家族の介護力は低下しており、しかも、介護負担の多くを女性が担っているという状況があります。
また、高齢者に対する身体的・精神的な虐待のほか、一人暮らしの高齢者や認知症高齢者、障害を有する高齢者を中心に、日常生活において財産や金銭を詐取されたり、暴力やいじめにあうといった人権侵害が見られるとともに、介護サービスを受けるにあたり、不適切な処遇や不十分な説明によって不利益をこうむる場合もあります。このような中、介護サービスにおける利用者保護の確立が求められます。
あわせて、高齢者ができる限り介護を要する状態になることなく、健康でいきいきとした生活を送れるように、健康づくり、疾病への早期対応、地域リハビリテーション等の介護予防や生活支援などの積極的な推進が求められます。
また、高齢者自身が自らの経験と知識を生かし、社会の構成員として積極的な役割を果たすことにより、生きがいをもって生活することができる地域社会を実現していく必要があります。

5.子どもの人権

子どもを取り巻く社会状況としては、仲間はずしや言葉・暴力による「いじめ」など深刻な状況が続いているほか、不登校の児童・生徒数も増加傾向にあります。また、学校における教師による体罰やセクシュアル・ハラスメントの問題もあります。このほか、さまざまな要因から非行に走る子どもたちがおり、いわゆる援助交際や児童ポルノなどの性の商品化の問題も指摘されています。さらに、保護者による児童虐待が相次いで発生し、深刻な社会問題となっていることから、より一層子どもの「生きる権利」「育つ権利」「守られる権利」などの権利擁護に努める必要があります。
また、世代間における育児の知恵の継承や、地域における子育ての助け合い機能が低下していることから、子育て家庭が抱える負担感の軽減のため、家庭の子育て力を高める取り組みや子育て支援策の充実などの子育て環境の整備を、地域をはじめとする社会全体で推進することが求められます。青少年の健全育成については、家庭・学校・地域における関係団体等の相互の連携を図り、活動を展開するなど、総合的な対応が求められています。一人ひとりの子どもたちが自己肯定感をもち、多様な個性や価値観を認め合い、豊かな人間性・社会性を身につけることができるよう、また、同時に子どもたちが本来持っている能力・特性を引き出せるように、人権の視点から子育て・教育活動の充実への取り組みが重要です。

参考

  • 児童の権利に関する条約「この条約の適用上、児童とは18歳未満のすべての者をいう。」
  • 児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律「この法律において「児童」とは、18歳に満たないものをいう。」
  • 児童虐待の防止等に関する法律「保護者がその監護する児童(18歳に満たない者をいう。)」
  • 児童福祉法「この法律で、児童とは、満18歳に満たない者をいい」

6.外国人の人権

外国人を取り巻く社会状況として、国際化の進展とともに諸外国との人的・物的交流が飛躍的に進み、日本に在留する外国人が増えるなど、人々の交流が進む一方、単一民族や単一文化といった固定的な意識のもと、同質化を求め、異質なものを排除しようとする意識が根強く残っています。言語、習慣、価値観等の相互理解が不十分であることなどによる外国人に対する偏見があり、住居、労働、福祉、医療、教育等、さまざまな問題があります。また、選挙権や公務員の受験資格といった法・制度上の大きな課題もあります。
大阪府には、歴史的経緯から在日韓国・朝鮮人が多く生活しており、これらを中心に外国籍の人びとに対する入居差別や就労差別、差別落書き、暴言・暴行といった人権侵害が発生しています。この様な差別を回避するために、その意に反して本名ではなく日本名(通名)で生活せざるをえない人もいます。また、比較的新しい時期に日本にやってきた定住外国人(ニューカマー)が急増し、「内なる国際化」が進んでいます。
世界人権宣言や国際人権規約の趣旨の普及のための啓発をはじめ、一人ひとりの人間性を尊重し、さまざまな文化や多様性を認めあい「共生・共助」する心を養っていくなど、内外人平等の理念を具体的に保障する取り組みが必要です。

7.HIV感染者等の人権

HIV感染症は、進行性の免疫機能障害を特徴とする疾患であり、HIV(ヒト免疫不全ウィルス)によって引き起こされる免疫不全症候群のことを特にエイズ(AIDS)と呼んでいます。感染力は弱く、感染経路も限られていることから、正しい予防知識を身につけていれば日常生活で感染することはありません。このため、HIV感染者、エイズ患者の社会の認識や受入れは、行政機関、NGO、NPO等のこれまでの取り組みの結果、少しずつ進みつつあります。ハンセン病は、らい菌による感染症です。感染力は極めて弱く、発病した場合でも現在では治療方法が確立しており、遺伝病でないことも判明しています。これまでのハンセン病に対する理解の過ちが明らかになり、ハンセン病回復者への補償、健康増進が取り組まれつつあります。
しかしながら、依然として偏見や差別、プライバシーの侵害などの問題があります。HIVやエイズ、ハンセン病などの感染症に関する正しい知識や患者・感染者に対する理解を深め、予防に努めつつ偏見や差別の解消を図る必要があります。

8.犯罪被害者やその家族の人権

犯罪被害者やその家族は、犯罪行為によって受ける直接的な被害のほか、その後の捜査や裁判の過程で精神的負担や時間的・経済的負担を感じたり、マスコミの取材・報道によるプライバシー侵害から生じる深刻なストレスや近隣の人からの心ない言葉等に傷つき、あるいは経済的基盤を失うといった、いわゆる二次被害にも悩まされており、中には著しいストレス障害から、通常の生活を送ることさえ困難な被害者も見受けられます。
こうした被害者等の実態をふまえ、いわゆる「犯罪被害者保護法」や「刑事訴訟法一部改正」など、被害者等の人権に配慮した関係法令の整備が行われたほか、被害者等を社会全体で支援しようという気運が盛り上がりをみせている中にあって、真に被害者等の人権を保護していくためには、刑事・司法関係者等に限らず、犯罪が市民生活にもたらす惨禍について広く理解と関心を高めることにより、被害者等の人権と尊厳を損なうことのないモラルの高い社会を実現する必要があります。

9.ホームレスの人権

ここ数年、長引く景気低迷の中、ホームレスが増加しています。ホームレスは、勤労意欲はあるが仕事がなく失業状態にある人のほか、医療・福祉等の援護が必要な人、社会生活を拒否する人など、その状況もさまざまです。こうした人びとは最低限度の生活水準を満たしているとは言い難い状況にあるうえ、暴行をこうむる事件なども発生しています。また、環境面等で地域住民との間で摩擦も生じるなど社会問題となっています。
平成14年(2002年)に「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」が成立したところですが、野宿生活者の自立支援に向けて国や大阪府との連携のあり方や役割分担、野宿生活者に対する就労支援などの具体的な対応をする必要があります。

10.労働に関する問題

労働に関する問題としては、本人の適性と能力に基づかない不合理な採用選考が見受けられるなどの就職における機会均等の問題、派遣労働者の就業に関する問題、パートタイム労働や日雇い労働などの就労形態や職種、職業に関する偏見や差別、セクシュアル・ハラスメントなどの問題があります。このため、雇用主に対する人権教育の充実や一定規模以上の事業所に置かれる公正採用選考人権啓発推進員制度を活用した教育の強化を図るとともに、人権問題に関する広範な教育の推進が必要です。

11.その他の問題

ひとり親家庭には偏見をはじめ、就労や経済的自立、家事・子育てなどのさまざまな課題があり、啓発とともに生活の安定と自立の促進のための支援施策の充実が求められます。
次に、個人情報等をめぐる問題があります。情報化社会の進展が多くの利便性と豊かさをもたらす一方、インターネット上で特定個人を誹謗中傷するといった名誉毀損や、私生活に関する事柄を公表されるといった悪質なプライバシー侵害や差別事象の発生などの問題が生じており、プロバイダーや利用者の責務の自覚や法規制の遵守が求められます。
また、住民基本台帳法の改正にともない、個人情報が全国的なコンピューターネットワークにより利用されるようになったため、その運用にあたってはプライバシーの確保等に十分留意する必要があります。
インターネットなど情報通信技術(IT)の発達にともない、これを利用できる人とできない人との間に情報格差(デジタル・ディバイド)が生じることで経済的・社会的な格差を生み出す可能性があることから、だれもが情報通信の利便が受けられるよう、情報リテラシー向上のための教育や利用環境の整備など、「情報のバリアフリー」に努める必要があります。
さらに、人権の尊重に立脚し、だれもが権利を侵害されることなく福祉サービスを適切に利用できるよう、公正で信頼できるサポート体制として、「権利擁護」「苦情解決」「サービス評価」など社会福祉法に規定されている「個人の尊厳の保持」を旨とする福祉サービスの目的を達成するためのしくみづくりとともに、市町村における「地域福祉計画」の策定が求められています。
こうした問題以外にも、アイヌの人びと、刑を終えて出所した人びと、性的マイノリティ(注)とされる人びとに関わる人権問題があります。さらに、企業活動における違法行為や法律の趣旨に反する行為、また、遺伝子工学や医療技術の急激な発展にともない、今後、新たな人権問題が発生するおそれがあります。
人権問題は、以上の範囲にとどまらず、これらが複合的に生じる場合もあるほか、新たに生起する場合もあります。
古くからの慣習などの中には、合理的な理由や科学的根拠のないものが少なくないうえ、思い込みや先入観が無意識のうちに差別意識を植え付けてしまうことがあります。こうしたことから、個々の人権問題について理解を深めることが大切です。
また、市においては、憲法における人権規定の保障を基本においた施策や制度の創設・運用を進めていますが、職務執行に際し、さらに公権力に携わるものとして責任の重大さを十分に認識し、既存の施策や制度の点検・見直しを行う必要があります。
注 性的マイノリティ:社会において、異性愛を自明のこととし同性愛者をマイノリティとする見方が支配的であり、また、性同一性障害者、インターセックス(先天的に身体上の性別が不明瞭であること)の人びとを含む総称。

(3)大阪狭山市における人権尊重のための取り組み状況

大阪狭山市では、これまで市民一人ひとりの人権が尊重され、自己実現のできる社会を築くために、さまざまな人権問題に関して、家庭、学校、職場、地域などあらゆる場において、人権学習会、研修会、講演会、街頭啓発キャンペーン、平和事業への取り組み、啓発活動などを行うともに、市民の自主的な学習への情報提供などの支援や、人権擁護委員と連携した人権相談など人権意識の高揚をめざして各種の事業に全庁をあげて取り組んでいます。
昭和43年(1968年)に狭山町同和教育研究協議会(現人権教育研究協議会)を、昭和46年(1971年)には狭山町人権啓発推進協議会を発足し、人権担当部署のみならず、学校教育、社会教育などの各分野においても、大阪府・府内市町村・関係諸機関・関係団体などとも連携しながら、さまざまな人権問題に関する教育・啓発・研修に積極的に取り組んできました。
昭和60年(1985年)には平和に関する取り組みとして、真の恒久平和をめざした「核兵器廃絶・平和都市宣言」を宣言し、また、平成5年(1993年)にはすべての人びとの人権が尊重・擁護され、差別のない社会がつくられることを願って「人権擁護都市宣言」が市議会で決議され、平成11年(1999年)には「大阪狭山市同和行政基本方針」を策定しました。平成13年(2001年)4月には「大阪狭山市人権教育基本方針」(旧「同和教育基本方針」)を策定しています。
これらの取り組みと並行して、国連提唱の平成7年(1995年)からの「人権教育のための国連10年」を受けて、庁内組織として市長を本部長とする「大阪狭山市人権教育のための国連10年推進本部」を設け、「人権教育のための国連10年大阪狭山市行動計画」を平成12年(2000年)3月に策定しました。
平成13年(2001年)3月には、まちづくりの中心に「人」を位置づけた「第三次総合計画」を策定し、人を大切にする視点と、市民と行政のパートナーシップによるまちづくりを進めています。
そして、平成13年(2001年)6月に「大阪狭山市人権文化をはぐくむまちづくり条例」を制定し、人権が守られ、一人ひとりが個性や能力を発揮していきいきと暮らすことのできる明るい社会の実現に努めてきました。
さらに教育・啓発のみならず、相談、自立支援などのより実効性のある人権諸施策を全庁的に取り組むため、平成15年(2003年)7月に「大阪狭山市人権教育のための国連10年推進本部」を「大阪狭山市人権施策推進本部」に改組しました。

2.人権行政の基本的理念及び視点

(1)基本的理念

すべての人間は生まれながらにして自由であり、かつ、その尊厳と権利について平等であることは、世界人権宣言にうたわれています。また、日本国憲法では、基本的人権の享有と法の下における平等が保障されています。この人権尊重の理念に基づいて制定された「大阪狭山市人権文化をはぐくむまちづくり条例」では、その前文で、人権に関するさまざまな課題が克服され、すべての人の人権が尊重されるためには、人権を特別なものとして考えるのではなく、当たり前のこととして互いの存在や尊厳を認め合うことにより、人権の理念が普遍的な文化として社会に根づく必要があるとしています。そして、市と市民が協働して、人権文化をはぐくむまちづくりを進めるために、たゆまぬ努力を行っていくとうたっています。
この条例のめざす人権文化をはぐくむまちづくりにおいて、今後、市が進める人権行政の基本的な理念として、

  • 一人ひとりが、かけがえのない存在として尊重され、人と人とが豊かにつながり合うことのできるまち
  • だれもが自分らしさを発揮して、自己実現でき、多様な生き方を認め合い、共に生きることのできるまち

を掲げます。

(2)視 点

基本的理念による人権文化をはぐくむまちづくりには、次の視点が重要です。

1.人権文化のまちづくりは人づくりから

市のめざすまちづくりとは、そこに住む人と人とが豊かにつながりあい、自分らしく、生きがいをもって暮らせる多文化共生のまちを創ることです。それには、まちづくりを担っていく市民の豊かな人間性や人権感覚をつちかうこと、つまり「人づくり」が最も重要です。一人ひとりの個性が尊重され、人と人とのつながりが、まず身近な家庭ではぐくまれることが大切であり、多様な人びとが、豊かにつながりあって孤立せず互いに支えあう、いわゆる「開かれた地域」づくりが求められます。
現在、ボランティア活動を含め生涯学習活動を通じて地域社会のさまざまな課題を学び、自治意識や人権意識を高めながら、自らの生活や地域を充実・改善しようとする主体的な市民活動、言い換えれば「自分たちのまちは自分たちで」という自立した市民活動が、活発に展開されています。このように、すべての市民がこのまちで自己実現を図りながら、主体的にまちづくりに参加・参画していく「しくみづくり」が重要です。

2.生涯学習は人づくり

市民が自発的・主体的な生涯学習を通じて、自分自身の価値を認め、自分らしく生きること、つまり自己実現を図ることは、人権文化をはぐくむ「人づくり」の出発点です。
生涯学習を通して、生命いのちの尊厳をはじめ、互いの異なる考え方や生き方、価値観などを尊重し、その多様性を認め合う態度を身につけることが大切です。これにより自らの生活を高めることはもとより、人と人とが信頼でつながり合いながら、より良い地域社会づくりに関わっていこうとする自立した市民がはぐくまれます。

3.求められる市民と行政の協働

行政だけでなく民間の発想・活力を活かす協働の視点から、市、市民、事業者が連携・協働して人権尊重の精神が根づいたまちづくりを進めていくことが望まれます。
現在、ボランティアを運営主体として地域に根ざした多様な活動を展開しているNPO(非営利活動組織)などの市民公益活動団体は、地域社会とのつながりのなかで、自己実現や生きがいを得るためのさまざまな機会や実践活動の場を提供しています。この自主的・自発的な市民公益活動を中心とした生涯学習活動が、まちづくりの基本としての人権意識をつちかい、さまざまな人との交流や豊かな人間関係、地域の連帯感をはぐくむものとして期待されています。
さらに、人権をキーワードに活動するNPOなどが行う人権学習や人権擁護などの取り組みが、行政との協働も含めて今後広がり、ネットワーク化によりさらに進展すれば、人権の輪でつながる地域コミュニティづくりが進むことになります。

4.人権尊重を基本にすえた行政の推進

  • 総合行政としての人権行政

日常業務はもちろん、市のすべての施策の企画から実施にいたるまで、市の行政運営そのものを人権尊重の視点から推進することが重要です。人権尊重の視点が活かされた行政とは、人間の尊厳や自己実現、機会の平等、さまざまな人権課題を抱えた人の自立、男女共同参画、多文化共生などに配慮された行政です。そのためには、市職員の人権感覚の高揚はもちろん、市民の参加・参画の促進とともに、従来の縦割り行政システムにとらわれない組織横断的な連携や行政評価を含めた人権行政の推進が重要です。

  • 自立への支援と人権侵害の救済

さまざまな課題をもつ人や社会から疎外された人が自立し、社会の構成員として自己実現を図れるよう、社会的な支援が求められています。このためには、人権侵害を受けた、または受けるおそれのある市民が、自らの主体的な判断に基づいて課題を解決できるよう、当事者の立場に立った適切な相談・支援・救済を基本とした諸施策を市民と協働して展開します。
これには、すべての人が豊かにつながりあって人間らしく自分らしく生きる、つまり自身と他者を認めながら共に支えあって生きるという「共生・共助」の観点が重要です。

3.人権行政の基本方向

市の人権にかかわる施策の多くは、それぞれの課題に応じて、個別法や個別の諮問機関の答申等を踏まえて策定された方針・計画等に基づいて実施されています。
したがって、今後、前述の人権行政の基本的理念及び視点に基づいて、これら施策の個別課題に共通するものとして、市が積極的に推進する基本施策は

  • 人権意識の高揚を図るための教育・啓発に関わる施策
  • 人権擁護のための施策、すなわちさまざまな課題を抱える人の自立支援や、人権が侵害された場合またはそのおそれのある場合の相談・救済のための施策

であり、その基本方向を次のとおりとします。

(1)人権意識の高揚を図るための教育・啓発

1.生涯学習としての人権教育の推進

人権教育は、生涯学習の視点に立って、家庭、学校、職場、地域などあらゆる場や機会をとらえ、地域の実情等に応じて推進する必要があります。また、教育や研修の成果が人々の実際の行動として現れるよう努める必要があります。なかでも人権問題を的確に受け止める感性や人権を重視する姿勢をはぐくむことが重要です。したがって、「人づくり」の基礎として、幼少期から生命の尊さに気づかせ、豊かな情操や思いやりをはぐくみ、お互いを大切にする態度や人格の育成をめざす人権基礎教育に取り組むことは、その後の成長段階における人権教育を実効的なものにするために大きな役割を果たすものと考えられます。また、「内なる国際化」の推進、多文化共生の必要性が高まる中で、異なる文化、習慣、価値観等を理解し、尊重しあう「共生・共助」の心を育てるための教育の充実を図ることが重要です。
このため、今までの人権教育の成果を発展させ、さらに人権に関する学習の機会を家庭、学校、職場、地域などで一層充実させるとともに、市民と行政の連携・協働による人権教育への取り組みを進めます。また、学習内容においては、従来の知識習得型の学習から人権に関する知識が態度や行動に結びつくような実践的な学習への転換を進めます。
また、人権文化をはぐくむまちづくりの実現に深く関わる立場にある市職員・教職員には、常に人権についての正しい知識や人権感覚が求められています。市民の人権を守り、人権尊重の視点から市の施策の企画・運営を行える人材を育成します。

2.豊かなまちづくりのための指導者の育成

人権文化をはぐくむまちを創っていくためには、市民が普段のできごとを人権という観点から見直すとともに、地域のさまざまな課題について、自ら考え、主体となって、その解決に取り組むことが重要であり、それを地域全体で支えていくことが大切です。このため、地域において、市民の身近なところでの人権に関する指導者の存在・役割は特に重要となっています。
現在、市内において、NPO等の市民団体が、まちづくりの主体としての役割を担い、公共分野において地域に根ざし市民公益活動を中心とした多様な生涯学習活動を活発に展開しています。また、自治会や防犯委員会、地区福祉委員会などの市民組織では、地域で美化清掃などの環境活動をはじめ、防犯活動、福祉活動、交通安全活動など生涯学習活動を行い、自治意識や人権意識を高めながら地域コミュニティの形成に努めています。
「まちづくり」の基本である「人づくり」の出発点は、市民の自主的・自発的な生涯学習にあります。学習によって得られた知識や能力を自己実現や生きがいづくりに活かすととともに、社会的課題の解決や地域社会の発展に役立てていくことが大切であり、このことが正しく個人としての真に豊かな生活と、地域としての豊かなまちづくりの実現につながります。
多くの市民が参加する諸団体においては、常に人権を尊重する精神を養い、生涯学習活動を進めていくことが重要です。
このためには、行政、市民公益活動団体、公共機関、企業などが人権に重点をおく生涯学習推進のための地域ネットワークを構築し、連携・協力して、人権文化を育むための身近な指導者や人権教育を効果的に推進するための専門的な指導者の養成に取り組みます。
具体的には、人権への取り組みを率先して行える人材、人権ボランティア、人権教育を企画するプランナー、コーディネーターなどの新しい指導者養成の充実を図ります。また、それぞれの諸団体における指導者の養成に向けた自主的・主体的な取り組みを支援します。

3.人権教育の効果的な実施・情報提供

市では「人づくり・まちづくり」の基本として生涯学習をとらえ、総合行政において「生涯学習によるまちづくり」を進めています。この一環として平成12年(2001年)3月に策定した「人権教育のための国連10年大阪狭山市行動計画」は、市の全分野における事務事業を人権の視点から実施していこうとするものです。計画を実効性のあるものにするために、市では全庁的取り組みとして「大阪狭山市人権教育のための国連10年推進本部」を設置(平成15年に大阪狭山市人権施策推進本部に改組。)し、関係諸機関との連絡調整を図りながら、総合的な人権教育、啓発を企画・立案し、実施しているところです。
今後、人権教育をより効果的なものにしていくためには、すべての人が人権に関する知識を身につけるだけでなく、実際の態度や行動として結び付けられるように人権教育の手法を検討する必要があります。具体的には、学習者と人権課題における当事者の交流を深める機会の充実や身近で具体的な人権課題に即した学習内容など、学習者の知識と理解にあった手法を工夫します。また、人権教育を実施する際には、当初に「目的・成果目標」を定め、事前、期中、事後において評価を行い、それを今後の人権教育にフィードバックします。
人権教育は、市や、家庭、学校、地域、企業、NPOなどによって、あらゆる場や機会を通じて行われることにより、さらに効果が高まります。行政はその支援として、人権関係の諸機関との連携のもとに、研修講師、学習相談機関、教材など人権教育に関する情報を収集・整理し、情報提供の充実を図ります。
なお、人権教育・情報提供は、障害のある人、高齢者、子ども、外国人等に十分配慮し、学習者の立場に立って分かりやすく行います。

4.国、府、民間企業・団体等との緊密な連携

人権行政を進めるうえで、行政間の連携・協力が不可欠であることから、大阪府及び府内市町村で構成する大阪人権行政推進協議会などと有機的連携を図りながら、効果的な人権施策にかかる情報交換、相互協力を推し進め、より実効性のある取り組みを展開することが必要です。
また、人権行政の推進には民間における自主的な取り組みも大切であることから、財団法人大阪府人権協会、大阪狭山市企業人権協議会、大阪狭山市人権啓発推進協議会をはじめ、民間団体・企業、NPOなどとも連携を密にして、各々の分野における取り組みを奨励し、支援・協働を進めます。

(2)人権擁護のための施策

1.課題を抱えた人の自立支援

地域社会のなかで、すべての人が豊かにつながりあって、共に支え合い、生きがいや自己実現を得ながら、自分らしく生きることのできる社会の実現は私たちの願いです。
現在、市においては、人権を基本におく市民の自立支援に関して、福祉分野をはじめ、労働分野、教育分野等において、障害者や高齢者、ひとり親家庭、低所得者などを対象に、社会的・経済的に課題を抱える市民への自立支援事業を積極的に進めていますが、なお解決すべき多くの諸課題があります。
また、全国的にみると、各分野にまたがる人権問題においては、同和問題や女性・障害者・高齢者・子どもの問題、在日外国人問題などの従来の人権問題に加え、児童虐待やDV、いじめ、自殺者の急増やホームレス問題など新たな人権問題が発生しています。
これら多様化・複雑化する諸課題に対応していくためには、さまざまな課題を抱えた人が自らの意思で課題を解決する努力を行うと同時に、それを地域社会全体が支えるという点をしっかり見据え、個人の尊厳や生きがい・自己実現を重視した自立支援型の諸施策を総合的に展開することが重要となります。
このためには、地域における市民の自発的・主体的な支援体制の再構築を図ることが必要であり、その際、行政をはじめ、地域社会を構成する福祉団体、人権に関する団体、自治会、NPO、企業などが行う活動が連携しつながることが重要です。これにより、新たな地域コミュニティ・公共が創造され、地域社会全体で支えていくことが可能となります。
以上の点から、今後、地域と行政が協働し多様な分野における自立支援への取り組みを強化します。施策としては、市民の生涯学習の推進、社会参加・自立を促進するための施策の充実、ネットワークによる地域での自立支援体制の整備など、地域社会での「共生・共助」を重点とする総合的な施策の展開をさらに進めます。

2.人権侵害の相談・救済

  • 人権に関わる相談窓口の整備

人権侵害を受けたり、人権侵害につながる問題に直面したときに、市民と行政がそれぞれ役割を担いながら、協働して「相談・支援」を行っていくことが求められています。
これは、市民が人権侵害に関わる問題に直面した場合、市民の主体的な判断に基づいて問題解決ができるように、行政が相談・支援を行うとともに、地域においても同じく市民を支えていこうとするものです。
人権に関わる相談は、内容においては多くの要因が重なっているものがあり、相談窓口ではこれらの要因を整理し、本人の主体的な判断によって解決策が見出されるよう、きめ細かな対応が求められています。
現在、人権課題に関わる相談・支援は、国においては法務省が管轄する法務局と人権擁護委員により実施されています。同時に市では、法律相談や市民相談、女性相談、家庭児童相談、母子相談、障害者や高齢者を対象とした相談など各種の窓口を設置し対応しています。このように市の個別施策では従来から相談事業を実施していますが、複合的な要因を含む人権課題に対し幅広く総合的に対応するために、15年度(2003年度)から人権いろいろ相談を実施しています。
今後、市においては、多様な相談内容に柔軟かつ迅速に対応できるよう、各分野において相談員の資質の向上と人材養成を行うとともに、相談窓口相互の連携・強化を図ります。また、相談者が必要とする情報を的確・効果的に提供するためには、各相談機関や公的な支援制度、NPOや財団等が行っている援助活動などの情報を総合的に把握する必要があります。現在、公的機関の情報ネットワーク化が進んでいますが、さらに民間も含めた関係諸機関による双方向の情報ネットワークの確立を進めます。
課題を抱える人を地域で支えていくには、地域での身近な相談者の存在や支援が大切であり、これには、相談窓口の整備や人材養成など、地域自らが取り組んでいくことが求められます。このためには、行政をはじめ、地域社会を構成する福祉団体、人権に関する団体、自治会、NPO、企業などが連携する地域での人権ネットワーク化をさらに進めます。

  • 人権救済のシステム

自らの人権を守ることが困難な状況にある市民については、相談窓口から個別の施策や人権救済のための機関へつなぐことにより、事案に即した柔軟な対応を図ることが必要です。
現在、国をはじめ、大阪府や府内市町村、関係諸機関でも人権相談が実施されており、各相談機関のネットワーク化が順次図られていることから、今後、そのネットワークを強化し、活用します。
なお、人権問題に関わる紛争処理については、現行制度では国の事務となっており、法務省の人権擁護機関が重要な役割を果たしています。しかし、被害者救済の実効性に限界があるため、国の人権擁護推進審議会において、新たな人権救済制度の在り方について答申が出されたところです。市では、大阪府と連携しながらこのような動向も踏まえ、救済すべき事案について、適切かつ迅速に人権救済の手続きが図られるよう、国の人権救済機関への要望や連携協力体制の構築に努めます。

4.推進にあたって

(1)庁内推進体制の整備・機能の拡充

現在、市では、市政のすべての分野で人権文化をはぐくむまちづくりに関する施策を総合的かつ効果的に推進するために、平成15年(2003年)7月に、市長を本部長とし、各部局長を委員とする「大阪狭山市人権施策推進本部」および同幹事会(関係課長等で構成)を設置し、取り組みを進めています。
今後、市の人権施策をさらに充実していくためには、大阪狭山市人権文化をはぐくむまちづくり審議会の答申を受けて策定した、この人権行政基本方針に基づいて、全庁的な取り組みとして、これまで以上に関係部局間の有機的な連携と緊密な調整を行い、あらゆる施策に人権の視点を取り入れ、より実効性のある事業を総合的に展開します。また、各人権施策の実施状況を把握・点検・評価し報告書としてまとめるなど、より効果的な施策の推進に努めます。
さらに、市職員の体系的な人権研修を推進できる体制を整備するとともに、さまざまな課題を抱える市民に対する自立支援・相談機能の充実を図ります。

(2)市民と行政の協働

今、地方自治体は、中央集権・行政主導型社会から地方分権、市民参加・参画型社会の形成に向け、大きく変わろうとしています。地方分権による地方自治の形成には、行政による団体自治とともに、住民の意思に基づいて行う住民自治が不可欠であり、自治意識を持った市民と行政の協働によるまちづくりを進めることが求められています。このため、従来の「行政が公共の分野で社会的責任のすべてを担う社会」から「市民の自発性と自己責任を基調に市民が相互に支え合う社会」への移行とともに、市民と行政の新たな役割分担に基づく協働関係の構築が必要となっています。
このような背景のなか、市においては、平成13年度(2001年度)からスタートした第三次大阪狭山市総合計画において、まちづくりの中心に『人』を位置づけ、「人権の尊重をすべての施策の基調として『人』を大切にするまちづくりを市民と行政のパートナーシップにより進める」ことを明確化しています。
また、平成13年(2001年)6月には、「大阪狭山市人権文化をはぐくむまちづくり条例」を制定し施行しています。この条例は、市民と行政がそれぞれ役割を担い、協働することによってすべての人の人権が尊重される社会を実現していこうとするものです。
市では、「協働」の概念を「まちづくりに向け、市、市民、事業者及び市民公益活動団体が、地域の課題を共有し、共通の公共的目標に向かってそれぞれの果たすべき役割を自覚し、相互に補完し、協力すること」ととらえています。
社会の隅々まで人権尊重の精神が当然のように根付いている社会をつくるためには、この協働の概念が示すように、それぞれが役割を担い、補完・協力してまちづくりに取り組むことが不可欠です。それには、市民自身の自主的・主体的な生涯学習により人権に関する理解を深め、豊かな人権感覚をつちかうことを基本とするとともに、市においては、市民の生涯学習の推進、地域での人権に取り組む人材の発掘、人権ボランティア、コーディネーターなどの指導者の養成等を行っていくことが大切です。
そして、同時に、市では、人権に関する諸課題を市民と共有し、その解決に向け、人権教育・啓発だけでなく、自立支援・救済機能の充実に向けた取り組みを進めるとともに、協働事業を強化し充実を図っていくことが重要です。
このため、今後、市は、市民や、市人権啓発推進協議会・市企業人権協議会などの人権団体、NPO、地域組織、事業者との連携を一層深め、新たな組織の創設等も視野に入れて、人権ネットワーク化を進めます。

お問い合わせ
市民生活部市民相談・人権啓発グループ

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